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蓄音機の世界(その1)

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 昨年の東日本大震災による福島第一原子力発電所の大事故は、いろんなかたちで生活に影響を及ぼしました。
 夏のあいだは節電のため、どこへ行っても室温は高めに設定されています。自分が住んでいる地域の放射線の値にも詳しくなりましたし、食べものや飲みものの産地にも、ずいぶん敏感になりました。家族に子供がいるため、神経質になりすぎている面もあると思います。
 そして、自分が利用している電力が、福島から作られたものでもあること、それを作りだしていた福島県および近県では、放射能汚染が深刻な地域がある現状を知らされ、すこしでも電気に頼らない生活をしたいと思うようになりました。
 電気を使わない生活──それを実践するために、思いついたことがふたつあります。
 ひとつは足踏みミシンを入手することです。まだ実現していませんが、すでにミシン屋さんにお願いしています。
 これにはNHKの朝ドラ『カーネーション』の影響もあるのかもしれませんが、足踏みミシンのある風景が懐かしく思い出され、どうしてもほしくなりました。わたしの実家には、ミシンが置かれた部屋があり、そこはアップライトピアノが置かれた部屋と同じように、独特の雰囲気があったように思います。
 もうひとつは蓄音機です。これはゼンマイで動くので、電気はいっさい使用しません。
 きっかけは、ラジオの『ポップス進化論』という番組で、いしいしんじさんが所有する蓄音機から流れるSP盤の演奏を聴いたことです。音楽とは空気の振動ですが、CDの場合には、音源を記録するさいに、一度、電気を利用して編集作業をします。もちろん不必要なノイズを取り除いたり、音のバランスを最適化するのですが、その過程で、音が「抽象化」されてしまうような気がします。
 蓄音機の場合は、ダイレクトに記録したものを、そのまま再生するため、そのような「抽象化」は、ほとんどおこなわれません。直接性のメディアだという気がしますし、なにより電気を使わない音楽というのが新鮮に感じられました。

 画像は、ポータブル蓄音機HMV #102。蓄音機の梅屋のHPより。

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