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蓄音機の世界(その2)

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 蓄音機の特色ですが、まずレコード針は一度聴いたら、それで終わりです。
 SP盤の場合、約3分30秒しか録音できませんが、それだけ再生したらおしまいで、次のレコードを聴くためには、新しい針が必要になります。
 針がもったいないと思うせいかもしれませんが、音を再生するときには、たいてい複数で聴きます。つまり、ひとつの音楽をみんなで共有します。これはたき火にあたるのに似ているような気がします。
 それから、たった3分30秒で終わってしまうので、何かをしながら聴くといったことがありません。蓄音機を聴くときは、それを聴くという行為に集中する。これも面白い現象だと思いました。
 そして、これらの特色は、iPhoneやウォークマンなどの機器を利用して、ヘッドホンで音楽を楽しむことの対極にあると思いました。個人ではなく大勢で、何かをしながらではなく聴くことだけに全神経を傾ける。蓄音機が再生する空気の振動は、とてもダイナミックで存在感があるため、おろそかにできない迫力があるのです。
 昔、レコードのことを「アルバム」といいましたが、その名称の由来もSP盤から来ています。
 1枚で約3分30秒しか録音できない媒体なので、クラシックの長い曲では何枚もに分けて記録します。そのため、曲によっては12枚組だったり、18枚組だったりするのですが、それがアルバムの形になるため、その名称が付いたのです。こういうことも初めて知りました。
 最近では、音楽をみんなで聴くことは、コンサート会場でないと体験しなくなりました。たいていは、電車のなかや自分の部屋で、個人的にイヤホンを通して聴いています。ヘッドホンステレオのおかげで、どこでも手軽に音楽が聴けるようになったのですが、便利になった分だけ、本来の音楽が持っていた力を受け取ることができなくなっているのではないかと思いました。そして、そのことに気づかせてくれたのが、蓄音機だったのです。

 画像は『SPレコードジャケットアート』のHPより。

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